朝礼挨拶・スピーチのネタおよび実例集

成功は偶然、失敗は必然 ~天狗にならず、言い訳をしない

 

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」
プロ野球の元監督、野村克也氏の言葉である。
何の理由もなく試合に負けることはなく、試合中に必ず何か負けにつながる原因が存在するという意味で、江戸時代の肥前平戸藩主で剣術の達人でもあった松浦静山の剣術書「剣談」から野村氏が引用した言葉だという。

 

「成功は偶然、失敗は必然」は、まさにビジネスにおいてまったく同様の原理原則を表現した言葉と言える。
いくら準備万端で臨んだことでも、その過程に人知れぬ大きな努力があったとしても、成功したらそれは偶然だったと思いなさい。

 

成功の形は、時代背景や社会情勢、価値観などによって移ろい変わっていくもの。今日は成功だったとしても、明日はそれが成功ではないかもしれないのです。ゆえに、そのとき、その瞬間に成功した、成功という流行に乗れたのは、まさに偶然の産物ということなのです。

 

時代の寵児と呼ばれ一躍、時の人となるような成功を収めた人でも、コツコツ努力を積み重ねてようやく日の目を見ることができた人でも、成功はやはり偶然なのだ。

 

では、真の成功とはどういうことか。時代や価値観の変化を受け入れる柔軟な構えによってのみもたらさるものだ。その構えとは過去の栄華や方法に固執しないことです。成功したパターンに固執せず、移ろい変わっていく成功の定義とその背景にある世の中の流れを感じ取り、変化・変容しながら、そのときどきのニーズに適応することです。

 

成功にはさまざまな要因があり、何よりもそこには予期せぬ偶然がある。「こうしたら成功した」という成功体験を真似して、そのまま再現したところで、必ずしも同じ結果が得られるとは限らないだろう。
そのとき、そのタイミングだったから上手くいったのであって、状況や前提を同じになどできないのです。極論すれば、たまたま成功することができたから、それが成功体験として語られているだけの話とも言える。

 

しかし、失敗はそうではない。失敗こそ必然であり、たまたまの失敗はあり得ないのである。

 

失敗の原因は、成功と違って普遍的なもの。成功に共通の要因はありませんが、失敗には「これをすれば必ず失敗する」という共通の理由があるのです。そうした要因を探し出して対処していくことで、失敗は防ぐことができる。つまり、成功する方法はないければ、失敗しない方法はあるということです。

 

また、失敗は必然という考えは、偶然のトラブルや想定外のミス、それらもすべてをひっくるめて「必然」とみなすということでもある。

 

それはつまり、不可抗力の出来事でも、それすら失敗の言い訳にするべきではない、ということ。失敗が必然とは、物事に対するそうした謙虚な姿勢を指してもいるのです。

 

失敗は必然で、すべての失敗には理由があるのなら、逆にいえば、失敗するたびに、同じ失敗を繰り返さないための学びと気づきのチャンスが与えられるということになる。

 

しかし、そのチャンスを拒否したり見逃したり、言い訳で逃げたりしてしまえば、そのたびに失敗の要因は更に深刻なものになってしまうだろう。

 

人は失敗すると要因を突き止めて検証するが、成功すると結果オーライで、その陰にある改善すべき重要な問題点があっても忘れてしまいがちだ。

 

そう考えると失敗体験は確実に糧になるが、成功体験はときに邪魔になるとも言える。
ビジネスでは、どうしても成功体験の方がもてはやされる傾向が強い。しかし偶然の成功体験に縛られ、凝り固まった思い込みや思考からの変化・変容を認めようとしない姿勢こそ、失敗のもっとも大きな要因となる。

 

世の中にはいろいろな成功体験本が出版されています。しかし成功は偶然と考えるならば、本当に役に立つのは人の失敗の体験から学ぶことができる本、つまり、失敗体験本のほうでしょう。「失敗は成功の母」になれても、「成功が次の成功の母」になれるとは限らいないのです。

 

成功は偶然、失敗は必然。
成功して天狗にならず、失敗して責任転嫁をしない。
成功してなお反省し、失敗してなお気づき、を学びなさい。