朝礼挨拶・スピーチのネタおよび実例集

想定外を他人のせいにしない

 

「想定外」。東日本大震災、そしてそれに伴って発生した福島原発事故。この未曾有の大災害以来、世の中でこの言葉を何度聞かされただろうか。

 

想定外とは、「事前に予想した範囲を超えていること」と辞書にある。こうした想定外の出来事による失敗は、毎日のビジネスシーンでも良く発生するものです。

 

例えば、突発的な事故などで電車が遅れたために、取引先との待ち合わせ時間に到着できず、遅刻したとします。このケースにおける「遅刻した」という失敗は、「事故で電車が遅れた」という想定外の出来事によるものだと言えます。

 

客観的に見れば「鉄道事故の発生はその人の責任ではない」ゆえに、遅刻も致し方ない、不可避の失敗であるということになるでしょう。

 

さて、ここで重要なのは、そうした状況下での失敗を、当事者がどう考えるかということです。ほとんどの場合、次の2つのタイプに分けられます。

 

ひとつは、「事故は不可抗力。だから遅刻しても仕方ない」と考える人。
もうひとつは、「こんなことなら、もっと早めに出ればよかった」と考える人。

 

この後者のように考えることが重要なのです。つまり自助努力をするということ。傍から見れば本人の責任が居の失敗であっても、自分の能力や行動を省みる。想定外の出来事でもあっても、自分のあり方次第で回避できたのではないかと考えます。

 

外的要因(想定外の事象)による失敗も、内的要因(自分のミス)による失敗も、すべて同じ、ひとつの失敗と考えて、反省し、再発を防ぐ努力をする。つまり、さまざまな事象に対するこうした姿勢が重要なのです。

 

このようにする人は、失敗を外的要因に求めない、他人のせいにしない、責任転嫁をしない、責任放棄をしない。そのために落ち込んだり、ストレスを感じることもありますが、結果として、失敗を失敗と反省し、次に生かすことができるのです。

 

このような考え方がもっとも必要とされるのは、危機管理、リスクマネジメントなのです。
企業の危機管理とは、企業理念や経営目標の達成などを妨げて損失を与えるようなリスクから、企業自体の存続が危うくなるような深刻な事態までを事前に想定し、そうした危機的事態が発生しないように予知や予防といった対応をとることです。

 

そして万が一、そうした危機的事態が発生した時には迅速に対処して被害を最小限に食い止めることです。そもそも企業を襲う危機的事態というものは、そのほとんどが不測であり緊急であり、想定外なのです。

 

そんな事態が発生したときは、「誰が悪い」とか「どこの部署に責任がある」などという議論は後回しで、まず全社が協力して最悪の事態を回避する努力をしなければなりません。その時に、「世の中、景気が悪いんだから仕方がない」、「よそだって似たようなものだ」といった外的環境への責任転嫁や、「うちの部署は、うちの支店は問題を起こしていないから関係ない」といった責任放棄につながる考え方では、危機的状況を乗り越えるのは非常に難しいでしょう。

 

危機管理とは、想定外管理とも言い換えられます。想定外の事態でも原因を外的要因に求めず、責任も放棄することなく、自助努力で被害を抑えて、その経験を次に生かす。そんな姿勢ことが、企業の危機管理の本質といえるのではないでしょうか。

 

出典:ふじやま学校の朝礼・終礼